本記事は、ASD当事者である私が不条理な社会というクソゲーを生き抜くために脳内バグをデバッグした結果をまとめたものです。
医学的・専門的なアドバイスではなく、あくまで個人の生存戦略としての記録であることをご了承ください。
――不条理な世界と互換性の無いOSから出力された、論理的且つ実戦的な検証データが、同じ仕様(アーキテクチャ)を持つあなたの脳の静寂をもたらす一助となれば幸いです。
「人間は論理的な生き物である」——もしあなたがそう信じているなら、それは美しいファンタジーだ。
私たちのように、物事を因果関係やファクトで捉えようとする「論理優位(あるいはASD的)」な人間からすると、この世界は常にバグに満ちている。
正論は通じず、数字は無視され、わけのわからない「お気持ち」だけで社会のルールがひっくり返る。
「なぜ、こんな非論理的なことがまかり通るのか?」
もしあなたが日常でそんな違和感を抱えているなら、今回は日本の歴史上、もっとも分かりやすく、そしてもっともバカバカしい「社会のエラー」を一緒に解剖してみてほしい。
平成という時代の入り口で起きた伝説の狂気、「のーぱんしゃぶしゃぶ事件」である。
脳の「スペック」と行動の「OS」は別物である
事件の謎に迫る前に、まずは人間というシステムに関する残酷な真実を共有しておこう。
それは、「脳のスペック(IQ)の高さと、行動を決定するOS(基本ソフト)は全く別物である」という事実だ。
私たちはつい「頭の良い人間は、論理的な行動をとるはずだ」と思い込みがちだ。
しかし、どんなに学歴が高く、複雑な計算ができる「超高性能なハードウェア」を持っていたとしても、人間を動かしている基本ソフトは、どこまでいっても「感情OS」なのである。
心理学のデータを見るまでもなく、怒りや見栄、そして欲望の前では、いかに高IQな人間であっても論理的なエラーを起こす。
この「ハイスペックなのにOSがポンコツ」という人間の哀しい仕様が、この事件の最初の発火点となる。
日本一「論理的な脳」は、本当にただの欲望に敗北したのか?
事件の主役となったのは、当時の「大蔵省(現在の財務省や金融庁の元となる最強の国家機関)」のエリート官僚たちだ。
彼らは、東大のトップ層を勝ち抜き、国家予算という数兆円規模の数字を動かし、あらゆるリスクを計算し尽くす「日本一論理的な頭脳」を持った集団だった。
そんなリスク管理の天才たちが、何を血迷ったのか、あろうことか「お姉さんが下着を穿かずに接客してくれるしゃぶしゃぶ店」で、民間銀行から接待を受けていたのである。
論理的に考えれば、あまりにも割に合わない行動だ。
もしバレれば、これまでの努力も、日本最高の権力という地位もすべて吹き飛ぶ。
そんな巨大なリスクを背負ってまで、彼らは「目の前の女の子の下半身を見ながら肉を食う」というアホみたいな欲望と、身内のノリに屈してしまった……
少なくとも、世間一般の目にはそう映った。
超エリートたちの「感情OS」がショートし、論理が欲望に負けた瞬間。
しかし、本当に恐ろしいバグは、エリートたちの行動ではなく、それに対する「国民(定型マジョリティ)のリアクション」の方に潜んでいた。
数兆円の「実害」より、他人の財布の「スケベ」にキレる国民のバグ
ここからが、この事件の真骨頂であり、定型社会が抱える巨大な認知バグの証明である。
この事件が起きる直前、日本は二つの巨大な「実害」に見舞われていた。
一つは、バブル崩壊によって生まれた「13兆円にも迫る巨額の不良債権」と、その尻拭いとしてなんと「6850億円」もの国民の血税が投入された『住専(住宅金融専門会社)問題』。
もう一つは、反社会的勢力への利益供与や巨額の損失隠しという、資本主義のルールを根本から破壊した『山一證券の破綻』だ。
これらはどちらも、大蔵省のあからさまな政策の失敗であり、国民の財布と生活を直撃する「天文学的な規模の損失」である。
もしこの世界が論理OSで動いているなら、国民はこの「数兆円規模の論理的エラー」に大激怒し、国会を取り囲んで暴動を起こしていなければおかしい。
しかし、現実はどうだったか。
複雑な金融の仕組みや、「数兆円」というデカすぎる数字を突きつけられた時、世間は怒るどころか、処理能力の限界を超えてフリーズしてしまったのである。
そんな思考停止の社会に、突如として放り込まれたのが「のーぱんしゃぶしゃぶ」の報道だった。
論理的にファクトを整理しよう。
官僚たちがこのシュールな飲食店で使った金額は、一人当たり数万円。
全体でも数百万円レベルだ。
しかも、使われたのは税金ではなく「民間銀行の交際費」である。
(もちろん銀行の儲けの原資は国民の預金だが、国家権力によって強制徴収される「税金」とは本質的にレイヤーが違う)。
つまり、国家の財布に対する直接的な実害で言えば、住専問題の数兆円に比べたら「ほぼゼロ」に等しい。
にもかかわらず、フリーズしていた世間の脳内センサーはこの報道でパッと点火し、日本中が国民総ブチギレの「大炎上状態」へと移行したのだ。
国民の懐を直撃する数兆円規模の「実害(論理)」には動かなかった社会が、税金でもないたった数万円の「スケベ(感情)」に対する生理的嫌悪感だけで大爆発し、結果的に日本最強の国家機関・大蔵省を解体へと追い込んでしまったのである。
この世界という「B級映画」は、客席からポップコーン片手に眺めよう
実害の大きさ(数字)ではなく、フラストレーションの爆発度(お気持ち)だけで社会が動き、国家機関すらも吹っ飛ぶ。
これこそが、私たちが生きているこの世界が「感情OS」で動いているという動かぬ証拠だ。
だから、もしあなたが正論が通じない世界に疲れているなら、もう論理で世界を正そうとして消耗するのはやめにしよう。
この世界は、そういう仕様(クソゲー)なのだ。
美しい論理は自分の胸の中だけに秘めておけばいい。
私たちにできるのは、この世界を「感情で動くバカバカしいB級映画」だと割り切ることだ。
わざわざスクリーンの中に飛び込んで論理の剣を振り回す必要はない。
安全な観客席に座り、ポップコーンでも齧りながら、この不条理な喜劇を笑って鑑賞しようではないか。
——と、ここで終われば「愚かなエリートと、感情的な大衆の話」で綺麗にまとまるのだが、ASD的な論理への執着を持つ私の脳は、どうしてもある一つの「致命的なエラー」を見過ごすことができなかった。
「いくらなんでも、天才官僚たちがわざわざあんな店に行った動機が『性欲』というのは、ロジックとして破綻していないか?」
実はファクトだけを並べていくと、この事件はエロでもなんでもなく、定型マジョリティが作り上げた「恐るべきエロ妄想(集団幻覚)」だったことが浮かび上がってくるのだ。
次回【第2回】、この社会が自ら作り上げた「エロ妄想」によって国家を爆破した、美しくも狂った生贄システムの全貌を解剖しよう。
【数兆円の実害より数万円のスケベで炎上する「感情OS(バグ)」社会を、観客席からやり過ごすための『補給物資』】
【行動OS解析プラグイン】超エリートの脳すらショートさせる「人間のバグ」を論理的に証明した、行動経済学のマスターピース
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(ダン・アリエリー 著 / 早川書房)
「脳のスペックが高くても、行動のOSはポンコツである」という本記事のコア・ロジックを、数々のユニークな実験で裏付けた行動経済学の入門書です。
人間がいかに欲望や見栄といった感情エラーに弱く、非論理的な選択をしてしまう生き物なのかを痛快に解き明かします。
正論が通じないクソゲーの世界において、他人の非合理な挙動を「そういう仕様である」と冷静に俯瞰し、無駄なHP消費を抑えるための最高の攻略本です。
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