本記事は、ASD当事者である私が不条理な社会というクソゲーを生き抜くために脳内バグをデバッグした結果をまとめたものです。
医学的・専門的なアドバイスではなく、あくまで個人の生存戦略としての記録であることをご了承ください。
――不条理な世界と互換性の無いOSから出力された、論理的且つ実戦的な検証データが、同じ仕様(アーキテクチャ)を持つあなたの脳の静寂をもたらす一助となれば幸いです。
パートナーの言動がどうしても理解できず、精神的に追い詰められていく「カサンドラ症候群」。
最近ではメディアやネットでも広く知られるようになり、「共感性のないASD(自閉スペクトラム症)のパートナーに振り回され、定型発達(NT)の側が被害を受けている」という構図が、世間の「常識」として定着しつつあります。
しかし、ASD当事者である私からこの問題を見たとき、どうしても拭えない強烈な違和感があります。
「それ、本当に定型発達側だけの問題なのだろうか? ASD側も、全く同じように苦しんでいるのではないか?」
今回は、世間で言われている「カサンドラ症候群」の前提をちょっとひっくり返し、双方向のすれ違いの裏にある「本当の構造」について考えてみたいと思います。
カサンドラ状態に陥っているのは、実は「お互様」ではないのか?
そもそも、世間で言われるカサンドラ症候群とは次のような状態を指します。
- パートナーの感情的な共有ができない
- 言葉の裏を読んでくれず、ストレートな物言いに傷つく
- 独自のこだわりやマイルールを押し付けられる
- 外では「いい人」として振る舞うため、周囲に悩みを話しても信じてもらえない
これらは確かに、定型発達のパートナーにとって耐え難いストレスです。
しかし、視点を逆に向けてみましょう。
ASD側の人間からすると、定型発達(多数派)の人たちのコミュニケーション・スタイルこそが、理解不能で、予測がつかないストレスの塊です。
- 「言わなくても察してほしい」という、言葉にされないルールの要求
- 論理や事実よりも、「その場の空気」や「感情の共有」を最優先する非合理な判断
- 気分や状況によって「正解」がコロコロ変わる基準
これらは、論理やシステムを好むASDの脳にとって、「いつ爆発するか分からないバグだらけのシステム」に囲まれているようなものです。
相手の言動が理解できず、自分の心身がすり減っていくという意味では、ASD側も定型発達側と全く同じ「カサンドラ状態」に陥っています。
それなのに、なぜ世間では「定型発達だけが被害者」というストーリーになっているのでしょうか?
科学が証明する「双方向の通信エラー」(二重共感問題)
このすれ違いの本質は、どちらか一方が「悪者(加害者)」だから起きるわけではありません。
現代の自閉症研究では、これは「双方向の通信エラー」であることが分かっています。
イギリスの自閉症研究者であるダミアン・ミルトンが提唱した「二重共感問題」という概念があります。
これは、「ASDに共感性がない」のではなく、「定型発達(NT)のOS」と「ASDのOS」の仕組みが根本的に違うために、お互いのシグナルが受信できないという現象を証明したものです。
定型発達同士であれば「暗黙の了解」で通じ合うことも、OSの違うASDとの間ではエラーを起こします。
逆に、ASD同士であればスムーズにいく論理的なコミュニケーションも、定型発達にはノイズに聞こえます。
つまり、問題の根っこにあるのは「どちらかの性格が悪い」ではなく、「使っているOSが違うことによるミスマッチ」に過ぎません。
ギリシャ神話が示す「本当のカサンドラ」の呪い
ここで、「カサンドラ症候群」という名前の由来になったギリシャ神話の物語を少しお話ししましょう。
神話のカサンドラは、アポロンから「真実を見通す予知能力」を与えられたものの、同時に「誰からもその予言を信じてもらえない呪い」をかけられました。
彼女はどれほど正確な真実を叫んでも、周囲からは「狂っている」と一蹴され、誰にも分かってもらえませんでした。
これを現代のカップルに当てはめてみてください。
定型発達のパートナーが「ASDの言動に苦しんでいる」と訴えた場合、世の中は多数派(定型発達)の社会ですから、親戚も、友人も、カウンセラーでさえも「そうだよね、大変だよね」とすぐに信じて、共感してくれます。
しかし、逆にASD側が「定型発達の非論理的なルールや感情的なすれ違いに追い詰められている」と真実を訴えたらどうなるでしょうか? 社会はこう切り捨てます。
- 「あなたが共感性を持ちなさい」
- 「もっと相手の気持ちを察しなさい」
- 「あなたの方に障害があるんだから歩み寄りなさい」
ASD側の訴えは、誰にも真面目に取り合ってもらえません。
「真実を語っているのに、誰も信じてくれない。分かってもらえない」 この孤独と絶望こそが、ギリシャ神話のカサンドラの本来の意味です。
そう考えると、社会から声を奪われ、苦しみを信じてもらえないマイノリティ(ASD側)こそが、真のカサンドラ状態にあると言えないでしょうか。
どちらかが「加害者」の物語を降りる
「被害者は定型発達で、加害者はASDだ」というお決まりの物語に囚われている限り、この問題は解決しません。
お互いが「相手のOSが自分とは全く違うんだ」という事実を知らないまま、自分の正しさをぶつけ合えば、どちらも精神的にすり潰されてしまいます。
では、この噛み合わない世界で、私たちはどうやって摩擦を減らし、自分を守っていけばいいのでしょうか?
次回の記事では、感情論や「もっと相手を理解しよう」といった綺麗事ではなく、自分の思考の癖(システム思考)の強みと限界を踏まえた上で、無理なく摩擦を減らす「言葉の翻訳戦略」についてお話しします。
【人間の脳(OS)がそもそも同じ世界を見ていないという「認知の仕様」を客観視するための『補給物資』】
【認知仕様・エラー解析プラグイン】「自分には見えている真実が、なぜ相手には全く伝わらないのか」のメカニズムを実験と事実で証明する科学的入門書
「二重共感問題」や、お互いに「自分が正しい真実を見ているのに通じない」というすれ違いの根っこには、人間の脳(OS)が持つ「認知の仕様上の限界」があります。
本書は、人間がいかに自分の見たいものしか見えておらず、相手と全く同じ世界を共有していないかを、数々の鮮やかな実験で証明した名著です。
専門的な知識が一切なくてもエンタメ感覚でサクサク読めるライトな仕様でありながら、「お互いのOSが違うから、見えている現実も受信できるデータも根本的に違う」という冷徹なファクトを腑に落としてくれる最高のチュートリアルです。
社会というクソゲーを攻略するためのデータを募集しています。あなたが遭遇した「理不尽な状況(バグ)」を教えてください。私が独自のロジックで解析・デバッグし、攻略データとしてブログで還元します。
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